【ケイエイ・ジョウホウ】弁護士 弁護士法人リーガルジャパン東京事務所 伊奈 さやか さん
今回のインタビューは、特別編としてリーダーの伊奈 さやかさんに、サブのおおくぼ じんがインタビューした内容をお送りします。
じん:今日のゲストは妻であり、母であり、弁護士であり、未来経営エキスポのリーダーもされている弁護士の伊奈さやか(いな さやか)さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
伊奈:よろしくお願いします。
じん:先生は1人で4役をこなされているわけですが、近年は、「女性の社会進出」という、おかしなキーワードのもとで女性を無理やりにでも活躍させようという動きがあります。すでに活躍されている先生的にはどんな意見をお持ちですか?
伊奈:そうですね、あえて「女性活躍」という言葉を使わないといけないのかもしれません。女性の賃金が低かったり、結婚しても家事や育児を担わなければならならない、さらに介護も担わなければならなかったりという現実があることから、まだ使わざるを得ないのかなと思います。
じん:なるほど。僕は56歳で、周りのさまざま家族の日々というのを見てきましたが、やはり女性が担っている、つまり労働と言っていいのかわからないですけど「仕事と言わない労働の量、質」共に大変なんだろうな、ということは想像できます。ところで、先生はなぜ弁護士を目指されたんですか?
■小学生の時から目指してきた「弁護士」という仕事
伊奈:はい。小学生の思春期の頃に女性は、私のイメージだとお茶汲みとかしかできないというイメージだったんです。でも、絶対に向いていないし、できないと思ったので「女性でも男性と同じく働ける仕事がしたい」と思っていて、たまたま知ったのが弁護士だったんです。で、そのままなりたいなと。
よくわからないまま大学へ行って、実際に働いている先輩方と触れると、やっぱり「楽しそうだな」「いいな」と思って、それで弁護士になりました。
じん:でも、なろうと思ってなれるような簡単なものでもないですし、確固たる信念がないと、司法試験を超えてくるというのは大変ですよね。僕の周りにも弁護士の方がいるので、どれくらい大変な仕事なのかはなんとくは分かっています。弁護士を目指している学生時代は、どんなお子さんだったんですか?
伊奈:学生時代は、小中生の頃もだいたい真面目な人ですよね。自分で言うのもなんですけど(笑)。
じん:何かスポーツもしそうな雰囲気ですけど。
伊奈:そうですね、スポーツは大学時代にサークルに入っていて4年生になってもやっていました。(笑)
先輩からは、そんなことやっていたら司法試験に受からないよ、と言われていました。
じん:それで、司法試験は何歳で受かったんですか?
伊奈:24歳です。少し早いぐらいじゃないですかね。
じん:24歳で受かるって大学を出てすぐくらいですよね?
伊奈:そうですね。平均年齢よりは若いかもしれません。
■日本の弁護士の存在価値向上を目指して
じん:それで、企業の顧問弁護士の先生は、どんな業務をされているんですか?
伊奈:それは弁護士によって違うと思いますが、大枠で分けると、一つは契約書の確認が大きいのではないかなと思います。顧問先の会社が締結する予定の契約書について「先方からこういう修正依頼が来たので見てください」とか、逆に「先方からひな形が来たので見てください」というのが多いです。
じん:近年は、コンプライアンスの問題など、だんだん法整備化されていくもの増えていて、企業が準じなければいけない法律が増えていますよね。そういったことについても解説やセミナー的なことをしてくれるんですか?
伊奈:はい、例えば2020年の個人情報保護法の改正の時などはしていました。業界の法律になると、クライアントの方が詳しいですけど、それ以外のところの法律で、クライアントに関係がありそうなものがある時はお話しています。
じん:なるほど。会社を経営するために、守らなくてはいけない法律が増えていく中で、法律を勉強する時間、特に経営者は忙しくて時間がないですよね。さらに、スタートアップ中小企業は顧問弁護士がいないことが当たり前ですが、「それじゃ、これからやっていけないよ」ということですね。
伊奈:はい、そう思います。
じん:少し舞台裏の話を伺いますけど。コロナ禍になって弁護士の先生もオンラインの中でさまざまなことをしていかなければなくなったと思います。先生も、オンライン上のコミュニティにいくつか所属されていると思いますけども、それは新しいクライアント、顧問先を探すということが目的ですか?
伊奈:一つは、そうですね。弁護士は、大きく分けると「顧問になって恒常的に関わる」ものと、「紛争が起きた時にご依頼をいただいて代理人になって関わる」ものとがあります。ただ、「今、何か紛争が起きていませんか?」という営業はあり得ないので。(笑)
実際は、企業からすると何かトラブルがあった時に初めて弁護士がいなきゃいけないというのを認識するというか、必要に駆られる方が多いのが現実です。
じん:実際、オンラインの中で色々な経営者、まだ顧問弁護士がいない経営者と話しをした時の温度感はどうですか?
伊奈:やはり「関係ない」という感じは受けますね。
じん:それを「関係ある」に変える一番大きなキーワードというか、先ほど必要性はリーガルチェックのような仕事だと言っていましたが、もうちょっと大局で見たときに、「経営に弁護士が必要なのである。なぜなら。」というところは何か考えていませんか?
伊奈:「リスクを減らすため」というのがあります。ただ、リスクが大きい業態、小さい業態というのがあります。そうなってくると、弁護士がいた方がいいというアピールを弁護士業界ができていないところがあると思っています。何かあった時に顧問に就いてれば優先的に相談に乗れて、早めに解決できる。そうやってリスクを減らせるというところがあると思います。でも、なかなか難しいですね。
じん:日本の会社はリスクをマネジメントする、まあカタカナが並ぶと軽いものに聞こえがちですが、リスクとクライシスの違いみたいなことは、教えないじゃないですか。リスクというのは、クライシスになる、危機になる前の話ですから、そこを管理して、危機に陥らないためにやるのがリスクマネジメントだと思うんですけど。何かこの辺のキーワードをうまく使って、すべての経営者が「士業の方を自分のブレーンとして置いておくことが当たり前である」という風潮にしていかないといけないのかもしれませんね。
今は、新規法人の10年寿命、10年を超えるまで経営できている会社が10%を切っていると言われていますけど、そんなところを士業の人たちが手を取り合って、例えば弁護士と税理士がチームで面倒を見てあげますよ、みたいな事はやっていないんですか?
伊奈:動きは出ていますけど、まだうまく機能していないかもしれません。実例として多いわけではないんですけど、士業同士でやっていこうという話は、特に若手などでは出ている気がします。
じん:会社を立ち上げたら「どの士業チームと付き合うの?」みたいなことが当たり前になってくると、もうちょっとリスクをマネジメントできて経済の底上げに繋がるんだろという気はしていますが。
■未来経営EXPOのリーダーとして
さて、未来経営エキスポも2年目に入ったところですよね。初めの1年間は出展者として入ってらっしゃったわけですよね?
伊奈:そうですね。
じん:それは、新規の顧客の開発が目的で、他のオンラインコミュニティ同様の目的で入られたということですか?
伊奈:それもありますが、あまり考えずに飛び込んでしまいました。(笑)
目標としては、全ての経営者、それは個人事業主やフリーランスの方でも、全てのお仕事をしている方に「伴奏する弁護士」を付けたいという思いがあります。そのためには「弁護士の使い方」というのを知ってもらった方がいいのかなと。
皆さんがふと浮かぶような紛争になった時や、裁判所を使うときの代理人ではなくて、ちょっと困った時に相談できるような。例えば、自社で使っているサービスを解約したい時に「書類1枚をこう書きたい」、そんな時に相談してくれたら、弁護士は書類のプロですから、すっと書いてお渡しできる。さまざまなところで使い勝手がいいわけです。そういうことをお伝えしたいと思っています。あとは、弁護士はよく「怖い」「敷居が高い」「偉そう」と言われるので、もっと身近に感じてもらいたいというのもあります。(笑)それをアピールする場になればと思ってEXPOに出展しています。
じん:いち出展者という立場で見た時に、他のオンラインのいわゆるコミュニティーは、「相互に」という立ち位置のものが多い中で、EXPOという世界観は出展者側と来場者側の立ち位置が明確で、来場者は話を聞くために来ている。少なからず「興味、関心があるからそのブースに行くのである」という事は先生が言っている「弁護士の必要性」をちゃんとお伝えすることができますよね。ありがちな「双方が営業をして終わり」のような世界観はよくありますけどEXPOでは、来場者はあくまで話を聞く立場、出展者は話をする立場ということでEXPOというイベントは成り立っていると思っています。
そんな中で、2年目に入ってリーダーという役割を引き受けていただいていますが、リーダーとして十数名の出展者に対してのリーダーシップの取り方として目指すところ、そして難しいところはどんなところでしょうか。
出展者へのメッセージも込めて、こうなって欲しいということや、ご自身がこういう風にできたらいいな、というところをお聞かせいただけますか。
伊奈:はい。1年やってみて、本当に出展者の方の専門性というのは本当に高いというのは身をもって実感しています。でも、その専門性が高いところが有機的な繋がりとなって、各専門家、つまり出展者に還元できているのかな、というとまだまだじゃないかなと思います。
はっきり言うと、出展しているのであれば、自分の専門性をさらに活かして人との繋がりを作って、ビジネスに還元できるような有機的な繋がりを作りたいと思っています。つまり、出展者の方にはもっともっと“ガシガシ”やっていただければ、と思います。(笑)
あとは、毎月開催ということになると、来場者の方は、一回来て興味がある話を聞いたら同じ出展者同じブースにもう一回行こうと思うのはハードルが高いので、出演者の方をもっと多く揃えて「あそこに行けば、いろんなことが次から次に、毎月違う出店者が出ているから面白い」とか、同じ出展者のところでも「今回は違う話をするからまた行ってみたら面白いんじゃないかな」と思えて、何か一つは持ち帰れるようにしたいと思っています。
じん:出展者というのはバラバラに集まって来ているので、個人事業主であったり、従業員さんだったりします。そこでチームワークを作り上げるというのはすごく難しいですし、その中で何か一つ目標を持つといのは大変だと思います。ただ、僕は「女性だから」みたいなこと言うと問題になることは分かりつつ、やはり女性として先生がリーダーを引き受けてくれたということで、出展者の意識が変わりつつあるし、一皮むけて新しい動きができるだろうなと期待をしています。弁護士であり妻でも母でもある、いわゆる世間で言う「女性の活躍」というところでも、リーダーシップも取れていくのではと思いっています。
最後になりますが、先生が目指す「私の目標」は何ですか?
伊奈:私の目標。さっきも言ったように、もっと多くの、私だけじゃなくて、もっと多くの弁護士が、もっと多くの人に、関わっていけるような世界にしたいなと思っています。あと個人的には死ぬまで弁護士をやりたいので健康!健康第一でやっていきたいと思っています。(笑)
じん:はい。ということで、今日は未来経営EXPOのリーダーを8月からやっ
ていただいている1人4役をこなす、もしかしたら、もっと違う役もこなされているかもしれませんが、スーパーウーマンの伊奈さやかさんにお話を伺いました。ありがとうございました。
伊奈:ありがとうございました。